中小企業のバックオフィスDX・AI化、何から始める?社員規模別のロードマップ

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室長TAKA(公認会計士)
監修26.10.20TAKA

会計・税務に関する記述は、公認会計士が確認しています。個別の判断は、顧問税理士または所轄の税務署にご確認ください。

社員5〜50人で、経理やITの専任がいない会社の社長に向けた記事です。経理・労務・総務の仕事をデジタルにし、生成AIを使い始めるまでの順番を、社員の人数ごとに示します。

診断結果

対象:社員5〜50人で、経理やITの専任がいない会社

  • 迷ったら、会計ソフトと、銀行口座・クレジットカードの連携から始める。毎月の入力が一番減り、ほかのツールをつなぐ土台になります。
  • 社員が6人を超えたら、紙の申請を1つずつなくす。経費精算と勤怠のうち、手間が大きい方からです。
  • 生成AIは、社内の使い方のルールを先に決めてから使う。社員が個人の判断で使い始めている会社は珍しくありません。

「何から始めればいいか分からない」は珍しくない

中小機構の2023年の調査では、社員20人以下の会社の27.7%が、DXの課題に「何を始めたらよいかわからない」を挙げました。2025年12月の同じ機構の調査でも、DXに取り組んでいるか検討している中小企業は39.1%でした(創業手帳の記事による)。

つまり、これから始める会社のほうが多いのです。最初から大きなシステムを入れる必要はありません。

DX・IT化・デジタル化の違い

経済産業省は、デジタル化を3つの段階に分けて説明しています。バックオフィスに当てはめると、次のようになります。

  1. デジタイゼーション:紙などのアナログの情報を、データにする段階です。例:紙の領収書をスマホで撮って保存する。
  2. デジタライゼーション:個別の業務の流れを、デジタルにする段階です。例:経費の申請から承認・振込までを、システムで回す。
  3. DX:会社全体の業務や、事業のやり方を変える段階です。例:月の数字を翌月の早いうちに見て、値決めや採用を決める。

社員50人までの会社なら、まず1段目と2段目を進めれば十分です。DXは、その積み重ねの先にあります。

社員の人数ごとのロードマップ

社員5人以下:会計ソフトを入れ、入力を自動にする

社長と事務1人で回している会社は、会計ソフトから始めます。

  1. 最初の1か月:会計ソフトを決め、銀行口座とクレジットカードをつなぐ。明細が自動で取り込まれ、手入力が減ります。
  2. 次の2か月:請求書を会計ソフトから出す。売上の記録が自動になります。
  3. その後:領収書はスマホで撮って保存する。電子帳簿保存法の保存のしかたに合わせます。

選ぶときの決め手は、顧問税理士がそのソフトのデータを見られるかどうかです。主な3社の料金は次のとおりです。

最初に入れる会計ソフト3社
プラン料金
freee会計照合
ひとり法人年払いの月あたり(年35,760円)。月払いは月3,980円。メンバー1人。経理・経営者相当の追加は1人あたり月1,000円(年払い)、最大2人まで。経費精算と電話サポートは使えない2,980円/月(税抜)
スターター年払いの月あたり(年65,760円)。月払いは月7,280円。メンバー3人。追加は1人あたり月300円(年払い)。経費精算は申請・承認した人1人あたり月300円の従量課金5,480円/月(税抜)
スタンダード年払いの月あたり(年107,760円)。月払いは月11,980円。メンバー3人。追加は1人あたり月300円(年払い)。経費精算は1人あたり月300円の従量課金8,980円/月(税抜)
アドバンス年払いの月あたり。月払いは月51,980円。メンバー5人。追加は1人あたり月1,000円(年払い)。経費精算は1人あたり月650円の従量課金。ワークフロー機能つき39,780円/月(税抜)
追加:経理・経営者相当のメンバー(スターター・スタンダード)年払いの場合(月払いは400円)。含まれる3人を超えた分。請求書や経費精算だけを使う一般従業員相当のメンバーは0円300円/1ユーザー・月(税抜)
従量:経費精算(スターター・スタンダード)その月に経費や各種申請の申請・承認をした人1人あたり。メンバーの追加料金とは別300円/1ユーザー・月(税抜)
従量:経費精算(アドバンス)その月に経費や各種申請の申請・承認をした人1人あたり650円/1ユーザー・月(税抜)
無料の試用
30日間
インボイス制度
対応
電子帳簿保存法
対応
補助金の対象
対応
マネーフォワード クラウド会計照合
ひとり法人年払いの月あたり(年29,760円)。月払いは月3,980円。利用者1名だけの会社に限る。1会計年度の仕訳は500件まで。AI-OCRの入力は月30件まで2,480円/月(税抜)
スモールビジネス年払いの月あたり(年53,760円)。月払いは月5,980円。利用者3名まで。部門は2つまで。AI-OCRの入力は月60件まで4,480円/月(税抜)
ビジネス年払いの月あたり(年77,760円)。月払いは月7,980円。利用者3名を含み、4名以上は1名あたり月300円。部門は無制限。AI-OCRの入力は月101件以上から1件20円6,480円/月(税抜)
無料の試用
1か月(ビジネスプラン相当)
インボイス制度
対応
電子帳簿保存法
対応
補助金の対象
対応
弥生会計 Next照合
エントリー年契約の月あたり(年34,800円)。月契約は月3,480円。会計・請求は各3名まで含み、4名以上は1名あたり月300円。経費精算・部門管理・有人のチャットとメールのサポートは対象外2,900円/月(税抜)
ベーシック年契約の月あたり(年50,400円)。月契約は月5,040円。会計・請求・経費精算は各3名まで含み、追加は会計・請求が1名月300円、経費精算が1名月400円。有人のチャットとメール、導入・運用支援つき。電話サポートと仕訳相談は対象外4,200円/月(税抜)
ベーシックプラス年契約の月あたり(年84,000円)。月契約は月8,400円。経費精算は5名まで含む(6名以上は1名月400円)。電話サポート(画面共有を含む)と仕訳相談つき7,000円/月(税抜)
追加:会計・請求(4名以上)会計と請求それぞれにかかる。全プラン300円/1ユーザー・月(税抜)
追加:経費精算(4名以上)ベーシックの場合。ベーシックプラスは6名以上から。エントリーは経費精算を使えない400円/1ユーザー・月(税抜)
無料の試用
最大2か月(ベーシックプラス相当。決算書の作成・出力は不可)
インボイス制度
対応
電子帳簿保存法
対応
補助金の対象
対応

は、各社の公式の料金ページと照合した日です。料金はその日時点のもので、変わっている場合があります。申し込む前に公式サイトでご確認ください。「対応」は各社の公式サイトの記載によります。「補助金の対象」は、デジタル化・AI導入補助金の対象ツールとして公式サイトに記載があるかどうかです。「未確認」は、照合した時点で確かめられなかった項目です。

社長1人だけの会社向けのプランは安い代わりに、利用者の数や機能に制限があります。たとえばマネーフォワードのひとり法人プランには、1年に登録できる仕訳の件数に上限があります(上の表の注記を参照)。3社の違いは会計ソフト3社の比較で詳しく見ます。

社員6〜20人:紙の申請をなくし、担当者1人に頼らない

経理を兼任の担当者に任せている会社は、紙の申請を減らします。担当者が休んだり辞めたりしても回る形にするのが目的です。

  1. 最初の1か月:経費精算と勤怠のうち、紙やExcelの手間が大きい方を1つ選んで入れる。
  2. 次の2か月:もう片方を入れ、給与計算とつなぐ。
  3. その後:申請と承認をスマホで済ませる。社長の承認待ちで止まらなくなります。

ここで迷うのが、会計ソフトと同じ会社のシリーズでそろえるかどうかです。経費精算システムの選び方と、勤怠管理と給与計算は別々か、まとめるかで判断の目安を示します。

社員21〜50人:承認の流れと支払をまとめる

経理担当がいる会社は、請求書の受け取りと支払の流れを整えます。

  1. 最初の1か月:取引先から届く請求書を、1か所で受け取ってデータにする。
  2. 次の2か月:経費や購買の承認の順番を決め、システムに設定する。
  3. その後:部門ごとの数字を、月の早いうちに見られるようにする。

請求書の受け取りサービスは、AI-OCR・受領サービスの比較で比べています。

進め方の5つの手順

どの規模の会社でも、次の順番で進めると失敗が減ります。

  1. 今の作業を書き出す:誰が、毎月どれくらいの時間、何をしているか。時間が一番かかっている作業から手をつけます。
  2. 顧問税理士に聞く:使っている会計ソフトと、データの受け渡し方を確かめます。
  3. 無料の試用で、1つの業務を1か月回す:会計ソフトは各社とも無料で試せます(期間は上の料金表の各製品の欄にあります)。
  4. 管理する人を1人決める:IT担当がいなければ、総務の担当者か社長本人です。利用者の追加や権限の設定も、この人が行います。
  5. 1つが定着してから、次を入れる:紙とシステムを並べて使う期間は、できるだけ短くします。

よくある失敗

  • 一度に全部入れる:社員が操作を覚えきれず、結局は紙に戻ります。
  • 顧問税理士に相談せずに選ぶ:決算のときに、データの受け渡しで手間が増えます。
  • 紙の申請を残したまま、システムでも申請させる:二重の手間になり、システムが使われなくなります。
  • 料金の条件を見落とす:人数が少なくてもかかる最低料金や、無料プランの件数の上限があります。各記事の料金表では、こうした条件も書いています。
  • 管理者が辞めて、設定が分からなくなる:管理者は2人にしておくと安心です。

生成AIは、ルールを決めてから使う

東京商工リサーチの2026年4月の調査では、中小企業の27.7%が、生成AIを「個人で活用していることもある」と答えました。38.7%は「方針は決めていない」と答えています。

会社として方針がないまま、社員が個人の判断で使っている状態です。取引先の情報や社員の個人情報を、意図せず入力してしまうおそれがあります。まず社内のAI利用ルールを決め、そのうえで経理・総務での使い方を試すのがおすすめです。

費用と補助金

バックオフィスを全部クラウドにしたときの月額は、社員10人の会社の構成例と総額で試算しています。ツールの導入には、デジタル化・AI導入補助金が使える場合があります。

出典と確認日

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