中小企業のバックオフィスDX・AI化、何から始める?社員規模別のロードマップ
会計・税務に関する記述は、公認会計士が確認しています。個別の判断は、顧問税理士または所轄の税務署にご確認ください。
社員5〜50人で、経理やITの専任がいない会社の社長に向けた記事です。経理・労務・総務の仕事をデジタルにし、生成AIを使い始めるまでの順番を、社員の人数ごとに示します。
診断結果
対象:社員5〜50人で、経理やITの専任がいない会社
- 迷ったら、会計ソフトと、銀行口座・クレジットカードの連携から始める。毎月の入力が一番減り、ほかのツールをつなぐ土台になります。
- 社員が6人を超えたら、紙の申請を1つずつなくす。経費精算と勤怠のうち、手間が大きい方からです。
- 生成AIは、社内の使い方のルールを先に決めてから使う。社員が個人の判断で使い始めている会社は珍しくありません。
「何から始めればいいか分からない」は珍しくない
中小機構の2023年の調査では、社員20人以下の会社の27.7%が、DXの課題に「何を始めたらよいかわからない」を挙げました。2025年12月の同じ機構の調査でも、DXに取り組んでいるか検討している中小企業は39.1%でした(創業手帳の記事による)。
つまり、これから始める会社のほうが多いのです。最初から大きなシステムを入れる必要はありません。
DX・IT化・デジタル化の違い
経済産業省は、デジタル化を3つの段階に分けて説明しています。バックオフィスに当てはめると、次のようになります。
- デジタイゼーション:紙などのアナログの情報を、データにする段階です。例:紙の領収書をスマホで撮って保存する。
- デジタライゼーション:個別の業務の流れを、デジタルにする段階です。例:経費の申請から承認・振込までを、システムで回す。
- DX:会社全体の業務や、事業のやり方を変える段階です。例:月の数字を翌月の早いうちに見て、値決めや採用を決める。
社員50人までの会社なら、まず1段目と2段目を進めれば十分です。DXは、その積み重ねの先にあります。
社員の人数ごとのロードマップ
社員5人以下:会計ソフトを入れ、入力を自動にする
社長と事務1人で回している会社は、会計ソフトから始めます。
- 最初の1か月:会計ソフトを決め、銀行口座とクレジットカードをつなぐ。明細が自動で取り込まれ、手入力が減ります。
- 次の2か月:請求書を会計ソフトから出す。売上の記録が自動になります。
- その後:領収書はスマホで撮って保存する。電子帳簿保存法の保存のしかたに合わせます。
選ぶときの決め手は、顧問税理士がそのソフトのデータを見られるかどうかです。主な3社の料金は次のとおりです。
| プラン | 料金 |
|---|---|
| freee会計照合 | |
| ひとり法人年払いの月あたり(年35,760円)。月払いは月3,980円。メンバー1人。経理・経営者相当の追加は1人あたり月1,000円(年払い)、最大2人まで。経費精算と電話サポートは使えない | 2,980円/月(税抜) |
| スターター年払いの月あたり(年65,760円)。月払いは月7,280円。メンバー3人。追加は1人あたり月300円(年払い)。経費精算は申請・承認した人1人あたり月300円の従量課金 | 5,480円/月(税抜) |
| スタンダード年払いの月あたり(年107,760円)。月払いは月11,980円。メンバー3人。追加は1人あたり月300円(年払い)。経費精算は1人あたり月300円の従量課金 | 8,980円/月(税抜) |
| アドバンス年払いの月あたり。月払いは月51,980円。メンバー5人。追加は1人あたり月1,000円(年払い)。経費精算は1人あたり月650円の従量課金。ワークフロー機能つき | 39,780円/月(税抜) |
| 追加:経理・経営者相当のメンバー(スターター・スタンダード)年払いの場合(月払いは400円)。含まれる3人を超えた分。請求書や経費精算だけを使う一般従業員相当のメンバーは0円 | 300円/1ユーザー・月(税抜) |
| 従量:経費精算(スターター・スタンダード)その月に経費や各種申請の申請・承認をした人1人あたり。メンバーの追加料金とは別 | 300円/1ユーザー・月(税抜) |
| 従量:経費精算(アドバンス)その月に経費や各種申請の申請・承認をした人1人あたり | 650円/1ユーザー・月(税抜) |
| |
| 公式の料金ページ | |
| マネーフォワード クラウド会計照合 | |
| ひとり法人年払いの月あたり(年29,760円)。月払いは月3,980円。利用者1名だけの会社に限る。1会計年度の仕訳は500件まで。AI-OCRの入力は月30件まで | 2,480円/月(税抜) |
| スモールビジネス年払いの月あたり(年53,760円)。月払いは月5,980円。利用者3名まで。部門は2つまで。AI-OCRの入力は月60件まで | 4,480円/月(税抜) |
| ビジネス年払いの月あたり(年77,760円)。月払いは月7,980円。利用者3名を含み、4名以上は1名あたり月300円。部門は無制限。AI-OCRの入力は月101件以上から1件20円 | 6,480円/月(税抜) |
| |
| 公式の料金ページ | |
| 弥生会計 Next照合 | |
| エントリー年契約の月あたり(年34,800円)。月契約は月3,480円。会計・請求は各3名まで含み、4名以上は1名あたり月300円。経費精算・部門管理・有人のチャットとメールのサポートは対象外 | 2,900円/月(税抜) |
| ベーシック年契約の月あたり(年50,400円)。月契約は月5,040円。会計・請求・経費精算は各3名まで含み、追加は会計・請求が1名月300円、経費精算が1名月400円。有人のチャットとメール、導入・運用支援つき。電話サポートと仕訳相談は対象外 | 4,200円/月(税抜) |
| ベーシックプラス年契約の月あたり(年84,000円)。月契約は月8,400円。経費精算は5名まで含む(6名以上は1名月400円)。電話サポート(画面共有を含む)と仕訳相談つき | 7,000円/月(税抜) |
| 追加:会計・請求(4名以上)会計と請求それぞれにかかる。全プラン | 300円/1ユーザー・月(税抜) |
| 追加:経費精算(4名以上)ベーシックの場合。ベーシックプラスは6名以上から。エントリーは経費精算を使えない | 400円/1ユーザー・月(税抜) |
| |
| 公式の料金ページ | |
は、各社の公式の料金ページと照合した日です。料金はその日時点のもので、変わっている場合があります。申し込む前に公式サイトでご確認ください。「対応」は各社の公式サイトの記載によります。「補助金の対象」は、デジタル化・AI導入補助金の対象ツールとして公式サイトに記載があるかどうかです。「未確認」は、照合した時点で確かめられなかった項目です。
社長1人だけの会社向けのプランは安い代わりに、利用者の数や機能に制限があります。たとえばマネーフォワードのひとり法人プランには、1年に登録できる仕訳の件数に上限があります(上の表の注記を参照)。3社の違いは会計ソフト3社の比較で詳しく見ます。
社員6〜20人:紙の申請をなくし、担当者1人に頼らない
経理を兼任の担当者に任せている会社は、紙の申請を減らします。担当者が休んだり辞めたりしても回る形にするのが目的です。
- 最初の1か月:経費精算と勤怠のうち、紙やExcelの手間が大きい方を1つ選んで入れる。
- 次の2か月:もう片方を入れ、給与計算とつなぐ。
- その後:申請と承認をスマホで済ませる。社長の承認待ちで止まらなくなります。
ここで迷うのが、会計ソフトと同じ会社のシリーズでそろえるかどうかです。経費精算システムの選び方と、勤怠管理と給与計算は別々か、まとめるかで判断の目安を示します。
社員21〜50人:承認の流れと支払をまとめる
経理担当がいる会社は、請求書の受け取りと支払の流れを整えます。
- 最初の1か月:取引先から届く請求書を、1か所で受け取ってデータにする。
- 次の2か月:経費や購買の承認の順番を決め、システムに設定する。
- その後:部門ごとの数字を、月の早いうちに見られるようにする。
請求書の受け取りサービスは、AI-OCR・受領サービスの比較で比べています。
進め方の5つの手順
どの規模の会社でも、次の順番で進めると失敗が減ります。
- 今の作業を書き出す:誰が、毎月どれくらいの時間、何をしているか。時間が一番かかっている作業から手をつけます。
- 顧問税理士に聞く:使っている会計ソフトと、データの受け渡し方を確かめます。
- 無料の試用で、1つの業務を1か月回す:会計ソフトは各社とも無料で試せます(期間は上の料金表の各製品の欄にあります)。
- 管理する人を1人決める:IT担当がいなければ、総務の担当者か社長本人です。利用者の追加や権限の設定も、この人が行います。
- 1つが定着してから、次を入れる:紙とシステムを並べて使う期間は、できるだけ短くします。
よくある失敗
- 一度に全部入れる:社員が操作を覚えきれず、結局は紙に戻ります。
- 顧問税理士に相談せずに選ぶ:決算のときに、データの受け渡しで手間が増えます。
- 紙の申請を残したまま、システムでも申請させる:二重の手間になり、システムが使われなくなります。
- 料金の条件を見落とす:人数が少なくてもかかる最低料金や、無料プランの件数の上限があります。各記事の料金表では、こうした条件も書いています。
- 管理者が辞めて、設定が分からなくなる:管理者は2人にしておくと安心です。
生成AIは、ルールを決めてから使う
東京商工リサーチの2026年4月の調査では、中小企業の27.7%が、生成AIを「個人で活用していることもある」と答えました。38.7%は「方針は決めていない」と答えています。
会社として方針がないまま、社員が個人の判断で使っている状態です。取引先の情報や社員の個人情報を、意図せず入力してしまうおそれがあります。まず社内のAI利用ルールを決め、そのうえで経理・総務での使い方を試すのがおすすめです。
費用と補助金
バックオフィスを全部クラウドにしたときの月額は、社員10人の会社の構成例と総額で試算しています。ツールの導入には、デジタル化・AI導入補助金が使える場合があります。
出典と確認日
- 中小機構「中小企業のDX推進に関する調査(2023年)」(J-Net21)( 確認)
- 中小機構のDX推進に関する調査(2025年12月実施)を伝える記事(創業手帳)( 確認)
- 東京商工リサーチ「生成AIの活用に関するアンケート調査」(2026年4月)( 確認)
- 近畿経済産業局「DXに関する経済産業省の施策紹介」(令和5年3月。DXレポート2の3段階の整理を含む)( 確認)
- freee会計:freee会計 料金プラン(新設法人向け。税抜表示の明記あり)( 確認)
- freee会計:freee会計 法人向け会計料金プラン(中小企業向け。アドバンスを含む)( 確認)
- freee会計:デジタル化・AI導入補助金2026 ITツール・IT導入支援事業者検索(各プランの登録を確認)( 確認)
- マネーフォワード クラウド会計:マネーフォワード クラウド会計 小規模〜中小企業向け料金プラン(税抜表示の明記あり)( 確認)
- マネーフォワード クラウド会計:マネーフォワード クラウド 価格・料金プラン(サービスごとの従量課金)( 確認)
- マネーフォワード クラウド会計:マネーフォワード クラウド会計 インボイス制度に対応するための機能をリリースしました(2023年3月22日)( 確認)
- マネーフォワード クラウド会計:デジタル化・AI導入補助金2026 ITツール・IT導入支援事業者検索(各プランの登録を確認)( 確認)
- 弥生会計 Next:弥生会計 Next 料金プラン・価格(税抜表示の明記あり)( 確認)
- 弥生会計 Next:弥生会計 Next 製品ページ(インボイス制度と電子帳簿保存法への対応)( 確認)
- 弥生会計 Next:デジタル化・AI導入補助金2026 ITツール・IT導入支援事業者検索(各プランの登録を確認)( 確認)
更新履歴
- 初版