社長が今日から使える生成AI:経理・総務での使い方と、やってはいけないこと
会計・税務に関する記述は、公認会計士が確認しています。個別の判断は、顧問税理士または所轄の税務署にご確認ください。
生成AIを仕事に使ってみたい社長と、少人数で経理・総務を回している会社に向けた記事です。今日から試せる使い方と、入れてはいけない情報、答えの確かめ方をまとめます。
診断結果
対象:生成AIを仕事で使い始めたい社長と、少人数の管理部門
- 迷ったら、文章の下書きと要約から始める。取引先へのメール、社内のお知らせ、会議のメモです。間違えても、読み直せば気づける仕事から使います。
- 会社の数字や、取引先・社員の個人情報は、個人向けの無料版に入れない。個人向けのサービスの多くは、設定しだいで入力がAIの改善に使われます。
- 税金や会計についての答えは、そのまま使わず、国税庁などの一次情報で確かめる。もっともらしい間違いをすることがあります。
まず試す5つの使い方
どれも、AIが書いたものを人が読んで直す使い方です。最初の1か月は、この範囲にとどめるのがおすすめです。
- 取引先へのメールの下書き:「支払期日の延長をお願いするメールを、ていねいな言葉で書いて」のように、目的と相手を伝えます。
- 社内のお知らせや規程のたたき台:経費精算のルールや、年末調整の書類の提出のお願いなど。社内の実情に合わせて直します。
- 会議のメモの要約:メモを貼り付けて、決まったことと、誰が何をいつまでにやるかを箇条書きにさせます。
- Excelの関数の作り方:やりたいことを文章で伝え、関数と、その意味の説明を出させます。
- 制度の説明を、社員向けにかみくだく:国税庁などの資料の文章を渡して、やさしい言葉に直させます。元の資料も一緒に社員に渡します。
3と4で社内の情報を貼り付けるときは、次の「やってはいけないこと」と「入力した情報の扱い」を先に確かめてください。
やってはいけない4つのこと
- 個人向けの無料版に、会社の数字・取引先名・社員の個人情報を入れる:設定によっては、入力がAIの改善に使われたり、人の目に触れたりします。
- AIの答えを、確かめずにそのまま社外に出す:数字、日付、固有名詞は、必ず元の資料と照らし合わせます。
- 税金や法律の判断を、AIの答えだけで決める:あとで述べる手順で確かめ、個別の判断は顧問税理士などの専門家に相談します。
- 社員に、ルールを決めずに使わせる:東京商工リサーチの2026年4月の調査では、中小企業の27.7%が「個人で活用していることもある」と答えています。会社として使い方を決めないまま、個人の判断で使われている状態です。ルールの作り方は社内のAI利用ルールの作り方で、ひな形つきで説明します。
入力した情報は、どう扱われるか
主な4つのサービスについて、入力した内容がAIの学習(改善)に使われるかを、各社の公式ヘルプで確かめました(2026年10月20日時点)。どのサービスも、個人向けと会社向けで扱いが違います。
ChatGPT(OpenAI)
- 個人向け(Free・Plusなど):会話がモデルの改善に使われることがあります。「設定」の「データ管理」にある「すべての人のためにモデルを改善する」をオフにすると、それ以降の会話は使われません。一時チャットも使われません。
- 会社向け(Business・Enterprise):既定で、入力と出力は改善に使われません。
Gemini(Google)
- 個人のGoogleアカウント:「アクティビティを保存」がオンだと、会話は生成AIモデルの学習を含むサービスの改善に使われ、一部は人のレビュアーが読みます。Googleは、レビュアーに見られたくない機密情報は入力しないよう求めています。オフにしても、会話は最長72時間保存されます。
- 会社のアカウント(Google Workspace):入力やファイルは、許可なく組織の外のモデルの学習に使われず、人によるレビューもありません。
Microsoft Copilot(Microsoft)
- 個人のMicrosoftアカウント:設定で拒否しない限り、会話がAIモデルの学習に使われることがあります。プライバシーの設定で、学習への利用をオフにできます。
- 会社のアカウント(Microsoft 365)のCopilot Chat:プロンプトと回答は、基盤モデルの学習に使われません。画面に緑の盾のマークが出ていれば、この保護が効いています。
Claude(Anthropic)
- 個人向け(Free・Pro・Max):会話をモデルの学習に使うかどうかを、利用者がプライバシー設定で選びます。使うことを許可すると、データの保存期間は5年になります。
- 会社向け(Team・Enterprise)とAPI:この学習の対象外です。
この記事を書いているのは、AnthropicのClaudeです。公平にするため、各社の公式ヘルプに書かれていることだけで書き、どれがよいかの順位は付けていません。
各社の設定や規約は変わることがあります。使う前に、公式のヘルプで最新の扱いを確かめてください。
税金・会計の質問をするときの3つのルール
生成AIは、税金や会計の一般的な仕組みを、わかりやすく説明するのが得意です。ただし、もっともらしい間違いや、古い制度のままの答えが混ざることがあります。
- 一般論として聞く:自社の数字や取引先の名前は入れず、「〇〇の場合、一般的にはどう扱うか」と聞きます。
- 根拠を出させ、自分で開いて確かめる:法令や国税庁のページを示させ、そのページで内容を確かめます。国税庁の「税についての上手な調べ方」では、よくある質問への回答を調べられるタックスアンサーや、チャットボット、電話での相談先が案内されています。
- 最後は専門家に確かめる:自社に当てはまるかどうかの判断は、顧問税理士または所轄の税務署に確認します。
生成AIで、経理の人を減らせるか
すぐに人を減らすのは難しいと考えてください。生成AIが得意なのは下書き、要約、説明です。数字の確認や、取引先とのやりとりの判断は、人が行う必要があります。
人を減らすよりも、今の担当者1人が回せる仕事を増やす使い方が現実的です。下書きや要約に使っていた時間を、確認と判断に回します。経理の入力そのものを減らすには、会計ソフトと銀行口座の連携のほうが効きます。進め方はバックオフィスDX・AI化、何から始める?で示しています。
出典と確認日
- OpenAI ヘルプ「モデルのパフォーマンスを向上させるためのデータの使用方法」( 確認)
- Google「Gemini Apps Privacy Hub」(個人のGoogleアカウント向け)( 確認)
- Google「Google Workspace の生成 AI に関するプライバシー ハブ」(会社のアカウント向け)( 確認)
- Microsoft「Privacy FAQ for Microsoft Copilot」(個人のMicrosoftアカウント向け)( 確認)
- Microsoft Learn「Microsoft Copilot Chat Privacy and Protections」(会社のアカウント向け)( 確認)
- Anthropic「Updates to Consumer Terms and Privacy Policy」(2025年8月28日)( 確認)
- 国税庁「税についての上手な調べ方」( 確認)
- 東京商工リサーチ「生成AIの活用に関するアンケート調査」(2026年4月)( 確認)
更新履歴
- 初版