社内のAI利用ルールの作り方(ひな形つき)
社員が生成AIを使い始めている、または使わせたいと考えている会社の社長に向けた記事です。社内のルールを1日で作る手順と、そのまま使えるひな形を示します。
診断結果
対象:社員5〜50人で、生成AIを仕事に使い始めている会社
- 迷ったら、下のひな形をそのまま使い、「使ってよいサービス」と「相談先」だけを自社に合わせて書き換える。
- 一番大事なのは、入力してはいけない情報を具体的に決めること。個人情報を入れる前に、そのサービスが入力を学習に使わないかを確かめます。
- ルールは短くし、作ったら全員に説明し、半年に1回見直す。サービスの設定や規約は、よく変わります。
なぜルールが要るのか
東京商工リサーチの2026年4月の調査では、中小企業の27.7%が、生成AIを「個人で活用していることもある」と答えました。38.7%は「方針は決めていない」と答えています。会社が決める前に、社員が個人の判断で使い始めているのです。
ルールがないと、次の2つが起きやすくなります。
- 入力してはいけない情報を入れてしまう:個人情報保護委員会は2023年6月の注意喚起で、本人の同意なく個人データを入力し、それが学習などに使われると、個人情報保護法に違反するおそれがあるとしています。入力の前に、サービスの提供会社が個人データを学習に使わないことを確かめるよう求めています。
- 答えの間違いが、そのまま社外に出る:生成AIの答えには、もっともらしい間違いが混ざります。
総務省と経済産業省の「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」も、AIを使う会社(AI利用者)に、個人情報や機密情報を不適切に入力しないこと、AIの答えを使った判断に責任を持つことなどを求めています。
ルールの作り方:5つの手順
- 社員の使い方を聞く:誰が、どのサービスを、何に使っているか。責めずに聞くのがこつです。
- 使ってよいサービスと設定を決める:会社向けのプランを契約するか、個人向けを学習に使われない設定で使うかを決めます。各サービスの入力データの扱いは、社長が今日から使える生成AIで比べています。
- 下のひな形を自社に合わせる:会社名、使ってよいサービス、相談先を書き入れ、合わない項目を消します。
- 全員に説明する:朝礼などで10分ほど。「入力してはいけない情報」と「間違えたときの連絡先」だけは、必ず口で伝えます。
- 半年に1回見直す:使うサービスや設定を変えるときも見直します。
ひな形
コピーして、〇〇の部分を書き換えてください。項目は、個人情報保護委員会の注意喚起と、AI事業者ガイドラインでAI利用者に求められていることに対応させています。
生成AI利用ルール
株式会社〇〇
制定:〇〇年〇月〇日
1. 目的
このルールは、社員が生成AIを安全に使い、仕事の質と速さを上げるために定めます。
2. 対象
正社員、契約社員、パート・アルバイト、派遣社員など、当社の仕事をするすべての人が対象です。
3. 使ってよいサービス
・仕事に使ってよいのは、会社が認めた次のサービスだけです:〇〇(会社のアカウントで使う)
・個人のアカウントで使う場合は、入力が学習に使われない設定にしたうえで、「5. 入力してよい情報」の範囲だけで使います。
4. 入力してはいけない情報
・お客様、取引先、社員の個人情報(氏名、住所、電話番号、メールアドレス、生年月日、マイナンバー、口座番号など)
・取引先から預かった資料、契約書、見積書の中身
・公開していない会社の数字(売上、利益、給与、取引の条件など)
・パスワード、アカウントの情報、社内システムの設定
・秘密を守る約束(秘密保持契約など)がある情報
5. 入力してよい情報
・公開されている情報や、一般的な質問
・名前や数字を伏せたり、架空のものに置き換えたりした文章
6. 答えの使い方
・答えは必ず人が読み、事実、数字、日付、名前を、元の資料で確かめてから使います。
・社外に出す文書(メール、提案書、ホームページなど)に使うときは、〇〇(社長など)の確認を受けます。
・税金、法律、労務の判断には、答えをそのまま使いません。公的機関の情報や専門家に確かめます。
・他人の文章、画像、ロゴとよく似たものは使いません。
7. 人についての判断
・社員の評価、採用、配置などの判断に、生成AIの答えだけを使いません。判断は人が行います。
8. 間違えたとき・迷ったとき
・入力してはいけない情報を入れてしまったら、すぐに〇〇に知らせます。
・使い方に迷ったら、〇〇に相談します。
9. 見直し
・このルールは、半年に1回と、使うサービスを変えるときに見直します。
決めるときの迷いどころ
個人向けの無料版を認めるか
小さな会社では、会社向けのプランを契約する前に、個人向けの無料版で試すことも多いはずです。認めるなら、入力が学習に使われない設定にすることと、入力してよい情報を「5.」の範囲に限ることを、必ず条件にします。
誰を相談先にするか
社員が気軽に聞ける人にします。IT担当がいなければ、総務の担当者か社長本人です。相談先が決まっていると、間違えて入力したときの連絡が早くなります。
違反したときの扱いを書くか
ひな形には、あえて書いていません。懲戒などの扱いは就業規則の定めによるため、書く場合は社会保険労務士などの専門家に確認してください。まずは、間違えたらすぐ知らせてもらえる雰囲気をつくるほうが効果があります。
生成AIの答えが間違っていたら、誰の責任か
AIの答えを使って社外に出したものの責任は、使った会社にあると考えてください。AI事業者ガイドラインも、AIの答えを使った事業上の判断は、AIを使う会社が責任を持って行うことを求めています。
だからこそ、ひな形の「6. 答えの使い方」で、人が確かめることと、社外に出す前に確認を受けることを決めています。
出典と確認日
更新履歴
- 初版